第5章 社会と制度
第5章 社会と制度
アメリカ初代大統領
大統領選出の手続き
11月の第1月曜の翌日にgeneral electionを行い, 選挙人を選ぶ
Super Tuesdayとよばれる
winner-take-all方式のために, 有権者の投票結果と反した結果が生まれることもある
大統領になるための資格
35歳以上でアメリカ在住14年以上, アメリカ出生であること
大統領の暗殺
大統領選に尽力したのに役職に就けなかった弁護士(ガーフィールドを暗殺), マッキンレーは無政府主義者の手で殺害された
リンカーンは南部連合支持者の凶弾に倒れる
ケネディ暗殺の同期は不明
どの事例も銃が使われているにも関わらず, 全米ライフル協会に会員・名誉会員として多くの大統領が加入してきた
セレブリティー名前と顔のマーケット
セレブリティの顔と名前はプロモーションビデオやコマーシャル, ゴシップ記事, インタビューなどさまざまなメディアで流され続けている
「有名であること」が売り買いされる
生産と消費のサイクルの中で有名人が構築され, 市場的に機能
有名人の構築とメディア市場の形成が相補的な関係であることを示す
P・D・マーシャル「有名人と権力」
私的・公的領域の二重性と曖昧化, 有名になりたい大衆, 民主主義と資本主義の欲望マシーンが複合的に機能
セレブリティの語義は「儀式」から「有名人」に変化
権力が教会や王権からマスコミュニケーションを基礎にした大衆社会へ移行したことをあらわにしている
個人を公的・政治的に解放する一方で, その個人を高度資本主義の流通システムに参与させてきた
ノーマン・メイラー「ファクトイド」
有名であることの証明をマスコミに依存していること
メディア事態が有名人を生産, 流通, 消費させる劇場と化し, 大衆がそのイメージを買う
映画での俳優のクローズアップ
観客はスターに自分を重ねる
スター構築がシステム化すると, 興行成績は誰が演じるかに左右されることになる
スターは, 個人の才能, 消費の自由, 高所得を得る自由といったアメリカ的イデオロギーを体現する商品
ハリウッド映画
テレビ
より大衆に密着した声質
ポピュラー音楽産業界
レコードと生の演奏という二つの媒体
会場ではアーティストとの親密感を味わい, その真実性を確認
セレブリティの人種・民族を超えて機能する力
スポーツ界のアフリカ系選手の活躍
名前をめぐる闘争と有名性の変容
個人として生きるアメリカ人にとって, 社会で生きることを可能にする「名前の力」をめぐる大きな事件
「名を挙げる」ことの拒否
IT界の有名人
技術開発によって情報も大衆化
セレブリティ構築も変化
誰もが情報発信者となる
アメリカ的なSNSであるフェイスブック
ユーザー自身がシステムを利用し, 有名性効果を得ることができる
発信者の顔と名前が情報保障であり, 広告である
人種差別
南北戦争後の1868年, 憲法修正条項第14によって黒人に白人とまったく平等の権利が謳われた しかし, 憲法に違反する不公正な行為は合衆国の不作為によってあえて目が瞑られてきた
Segregation
公教育の分離は違憲と見做されたあたりから, この主張は公に否定
しかし, 違憲状態を見て見ぬふりをする状況は続いた
アジア系アメリカ人への差別
本国の文化的背景を容易に手放さなかったため迫害された
ドイツ系やイタリア系もアメリカの敵国だったにも関わらず, 1942年に日系アメリカ人だけが強制収容所へ アファーマティブ・アクション
ジョンソン政権では人種だけでなく性差別の対象も考慮に入れた優遇策を推進 入試により優遇策を行なっていたカリフォルニア大学での受験生の訴訟をきっかけに, 風向きに変化
reverse discrimination
マジョリティが逆差別を受けているという主張
平等の規定に違反する?
論争は続行中であるが, カリフォルニア州で州政府による積極的優遇策が禁止されたことをきっかけに, 見直す州も増えている カリブ世界ークレオール文化の母体
出発点に帰るとカリブ海世界はむしろアングロ=アメリカによっての先進地域
アメリカがアメリカになるための極めて重要な要素を提供
「Americas」の起点にあった
コロンブスのカリブ海域到着
ヨーロッパの帝国主義のエンジンとなった大西洋三角貿易の地理的1頂点をなすカリブ海域
アフリカから黒人奴隷が移入, 砂糖プランテーション
集約化された奴隷のための居住体制が「クレオール文化」の母胎となった
砂糖が生んだ構造
圧倒的なアフリカ系の存在
20世紀のカリブ海内での労働力移植(ジャマイカやハイチからキューバへ) 産業革命以前から, 工業労働者と同じように集団作業をし, 決まった賃金を得る生活をしていた農場労働者
口承の民話の広がり
アメリカ現代文化とアフロ=カリビアン要素
ラップ
元はきわめてメッセージ性が強い
カリブ海を起点とする人々の先進国への移住によって, スペイン語系・フランス語系のカリブ海からの移民たちと混在し, 融合
ブレイクダンス
アフリカ系がルーツにあるダンス
リング・ダンスという形式
グラフィティアート
路上のグラフィティから始めて高い評価を得たバスキア ジャズやブードゥの意匠
クレオール化された現代美術の代表例
通信販売システム
1498年, ヴェネチアの印刷業者が発行したカタログが起源 1667年にイギリス人園芸家が苗木などのカタログ発行, 植民地にも広まる 1744年に科学書や学術書のカタログを作り, 販売 人口密度の低い農村地帯に多様な商品を提供できるシステム
当時, アメリカ総人口の74%は農村部に住んでいた
1872年, アーロン・モンゴメリ・ウォードがシカゴで中西部の農民向けに通信販売を開始 田舎の不便な流通事情と商品を望む消費者需要
1919年までには, 通信販売事業はアメリカ経済の主要部門に 年間5億ドル相当の商品を通信販売によって購入
個人化と消費の称揚という潮流を生み出す経済的・文化的装置出会った
通販カタログも進化と豊かさの象徴として, 流行・憧れを反映する文化的資料としての役割
急速な発展の背景
通販カタログが容易に入手できるように
鉄道網の拡張充実
輸送コストを下げ, 劣化しやすい製品でも輸送できるようになった
南北戦争における兵士の軍服調達のための規格サイズによる標準化 通販での洋服販売の素地となった
戦争
1812年の対英戦争から現在のアメリカ国家が生まれる 300年にわたる「インディアン戦争」
アメリカが初めて国外に軍隊を送る
アメリカの拡張主義に後押しされた戦争がこの後続く
戦争と文学
ルーシー・テリー「Bars Fight」
白人と先住民の衝突を黒人の女性が語るという構図
エスニシティや人種問題はアメリカの戦争に大きく関わっている
アメリカの帝国主義的な欲望
エマソンもアメリカの拡張ぶりに物欲や帝国主義的野望を見てとり厳しい眼差しを向けた 南北戦争の開始
メルヴィル「All wars are boyish, and are fought by boys」 ゴールウェイ・キネル「タワーが崩壊したときに」
9.11ー「テロ」の連鎖と監視社会
なぜ自爆テロは起こったのか?
アラブ諸国へのアメリカ軍の介入と拡張, それに対するアラブ諸国全体の反発と怒り
レバノン侵攻はアラブ諸国にとっての国際テロではないか?
テロの連鎖の根源はイスラム世界の政治・経済へのアメリカの暴力的な干渉と浸出にあった可能性
グローバリズムと富の不平等
先進国による周縁諸国の搾取
グローバル化が, 北半球と南半球の間の富の不平等を拡大させている
瓦礫の山になった廃墟には移民労働者や不法労働者たちの尸が
「世界システムの周縁的存在が中枢のど真ん中にアンダークラスとして浸出し, 彼らの存在なしには中枢が機能しないような確固とした空間を占めつつある」事実を露呈させた「思考をひらく」
監視体制と市民的自由の制限
「対テロ法案」
プライバシーを侵害し市民的自由を制限するセキュリティ強化
他者に対する不安と恐れ, 他者を「潜在的なテロリスト」と見なす視線
ミリオネアーあるアメリカの神話
個人崇拝に基づくミリオネア神話
現在では, スティーブ・ジョブズの伝記などがベストセラーに
ミリオネア神話の形成
右肩上がりの経済状況の中, 「new rich」(=「self-made man」の伝統をつぐ)の登場
アメリカンドリームの体現者
実際は, 適者生存という社会進化論の掟に基づく
マネーゲームでの優れた手腕による, 仁義なき戦いの勝者
英雄視される一方で, 「泥棒貴族」として社会的に糾弾される
新興成金の過剰な消費
セレブの威光を求める
「有閑階級の理論」
社会的地位が要求する必要不可欠なパフォーマンス
消費は限りなく有用性から離れ, 無駄に行われる必要がある
財力の顕示にその目的
社会的な地位を維持するための「労働」という側面
有閑階級の理論と弱肉強食の理論は表裏一体
資本主義の神々の黄昏
世紀転換期には, 社会の二極化が進み, 階層移動が困難に
ジョサイア・ストロング「危険なまでの富者と危険なまでの貧者」へと社会が分断されている事態に警鐘
アメリカの民主政治が資本家による寡頭政治へと変質していく危険性
アメリカンドリームの事実上の破綻
ミリオネアたち自身も「先祖返り」
英雄的な個人の時代が終わり, テイラーの科学的管理法をその規範とする没個性的な組織化と効率化の時代へと移行
主導者はself-made manたち自身である
しかし, 個人の時代が終焉したからこそ偉人伝や告発峰という形で表象されている
独身文化
「独身文化」の起源と水脈である 「アメリカン・ドリーム」の追求
独身男性は開拓期には勇ましい独立精神の象徴として尊ばれた
独立革命でも復権
勇敢さと名誉を体現する一方で, 近代化する社会の中で自己中心的に社会的自由を謳歌する独善者としてみなされる
懐疑の対象でもあり, 嫉妬の対象でもある
独立独行の実践者であるから
独身者の気ままな生活に対する羨望
男同士=同性同士の親密な繋がり
近代社会が次世代生産を前提とする結婚制度をしょうれいし, 異性愛を正常のセクシュアリティとして規範化する文化的言説を流布
同性愛者や独身者は負のレッテルが押される
社会的秩序へのきょうい
既婚男性にとって, 独身男性は同性間の親密性を享受する魅惑的な存在でありながら, 切り離すべき他者でもある
法的な取り締まりによって既婚男性は自らの規範的ジェンダーを公的に証明し, 異性愛家族を築く正当性を強化